アドラー心理学とは
アドラー心理学とは
アドラー心理学は、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラー (A.Adler)が提唱した心理学です。その後もアドラーの弟子達が時代の変化とともに理論を見直し、現代もなお発展を続けてきた、まさに最新の心理学です。
アドラー心理学の正式名称は個人心理学(Individual Psychology)です。
しかしこれは、個人を細かく分析したり個人のみに焦点を合わせるという意味ではありません。
たとえば、誰かが嫌なことを言ってきたりすると、頭にきて怒鳴ったり、あるいは悲しくて泣いてしまったりすることがありますよね。
こんなときはよく
「ついカッとなってしまって」とか「あの人の言葉に傷ついた」
などと言うことがあります。
もう少し心理学らしくいえば
「理性を保てなかった」
ということでしょう。
さらに心理学らしくいえば、【理性と感情・意識と無意識の対立】
「そんなつもりはなかったけれど」
怒鳴ったり泣いてしまったりしたのです。
アドラー心理学では、このような個人の中での矛盾をないものとして考えます。
これが個人心理学です。個人は全体で、個人の中で分裂はしていないと考えているのです。
ですからこの場合は、
「怒りたい目的があった」「泣きたい目的があった」
と考えます。
「誰か(なにか)がわたしをそうさせた」
のではなく
「わたしがそうしたい目的があった」
と考えるのです。
アドラー心理学は、心理学というわりに、人の心(意見)に興味がありません。
起こった出来事(事実)のみを切り取り、相手の方との対人関係を含め、誰がどんな言葉を発し、そのとき個人がなぜその行動に至ったか、という筋道を重視します。
そして、その筋道を個人と一緒に理解することで生きることの援助をします。
人の心(意見)に興味がないので、非常にドライな心理学だと言われることもあります。
物事をシンプルに捉えるからです。
個人は全体で、個人の中で分裂はしていないので、もちろん葛藤もありません。
つまりアドラー心理学では
「できない」はありません。「やりたくないだけ」と考えるのです。
しかし一方で、
「他者を支配しないで生きる決心をする」
「他者に関心を持って相手を援助しようとする」
という想いがあります。
たとえば子どもが不登校気味だったり、勉強がうまくできなくて大学への進学を悩んでいるときに、あなたにはどんな援助ができるでしょうか。
「学校に行かないといい大学にもいい仕事にもつけないわよ!」
「あの大学に行くために今日から猛勉強しなさい!」
……と、「あなたのためを思って」という武器でその愛情をカチカチの石にしてぶつけていませんでしょうか。
人は、石をぶつけられると、そこに愛があろうが痛いのです……。
まずは子どもと向き合って、話を聴いてみてください。
子どもはなにに関心があるのでしょう。将来、どんなふうになりたいのでしょう。
現実的に達成可能な目標を話し合って、優しくきっぱり援助してほしいのです。
子どもがうまく答えられないときは、子どもをよく観察し、その目的について推量し
「ひょっとしてこう考えている?」と聴いてあげてほしいのです。
そして子どもが自分で解決すべき問題を、信頼して見守ってほしいのです。
もしも立ち止まっていたら、さまざまなアイデアを提供して援助してあげてください。
その一方で、子どもに対するあなたの心配は、あなた自身で解決しなくてはいけない問題なのです。
あなたが解決しなくてはいけない問題を、子どもに押しつけてはいけないのです。
このように、 アドラー心理学にはシンプルな一面とドライな一面とハートフルな一面があります。 どれもアドラー心理学です。
わたしたちは誰一人、ひとりでは生きていけません。
ですから人を尊敬し、信頼し、協力していきたいのです。
周りの人々を幸せにすることで、人は幸せを感じます。
アドラー心理学とは、学ぶ本人よりも、その周りの人々が幸せになるために一生続けていく心理学であると、わたちたちは考えています。